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2012年鈴鹿8耐の裏で…..Part 2の2 清成龍一編

January 5th, 2013

そして決勝を迎えたのです。

高橋選手の怪我の状態、青山選手のアベレージを考慮して、基本的に清成は4スティント行く予定でした。とりあえず、第1と第3スティントを走り、あとはレース展開次第でと言う作戦でした。しかし、自分のセッティングではないマシンに乗ることで、想定していたよりも大きな負担が清成にかかっていました。

清成は好スタートをし、レース序盤からトップ争い。一時はトップはハイペースの中須賀選手に追い越されましたが、清成は焦ってはいませんでした。中須賀選手の世界耐久チームのマシンは燃費に問題を抱えていたと想定していたからです。鈴鹿8耐で優勝を狙うのにはトップチームは大体が7回ピットを予定します。これらのチームのライダーは1スティント27~28周を走らなければなりません。しかし、エンジンパワーに劣るチームはマッピングをフルパワー仕様に近いセッティングをするので、25周がやっと。そうすると、8回ピットになります。8回ピットになれば、ロスタイムとしてはかなり大きくなります。清成は中須賀選手のチームは8回ピットするであろうと想定していました。これは中須賀選手の第1スティントの走りを見ても、そうではないかと思われます。彼はかなりのハイペースで走行。これは多分、彼のチームメイトのアベレージ、そしてピット回数を考え、できるだけタイムマージンを取って、次のライダーへバトンタッチがしたかったのでしょう。その攻めが彼の130Rでの転倒に繋がったのではないかと思っています。

清成が第1スティントを終えてトップでピットに戻って来ました。そのまま、プールに連れて行ったら、開口一番「腰が痛い。第3スティントは無理とチームに伝えて来てください」と言うのです。清成は自分が知っている選手の中でも、ストイックなほどトレーニングをします。専属トレーナーをつけ、8耐開催の数ヶ月前からトレーニングをします。しかし、自分のセッティングではマシンを走らせた負担は予想より大きかった。彼の腰には拳くらいのコブが出来ていました。筋肉が固まったように。そこに激痛が走るんです。毎年、こう言ったコブはできますが、普通は最後のスティントかその前くらいです。第1スティントでこんなコブが出来たのは初めてです。チームにこの事を伝えると、第4スティントで走行することに変更されました。

高橋選手、そして青山選手が頑張りを見せてくれて、トップでまた清成にバトンタッチ。清成は第4スティントもトップを守り、レースは折り返し地点に。トップチームが脱落して行く中、優勝争いはこの次点でハルクプロかTSRの一騎打ちになって来ていました。TSRはレース前半はさほどペースが上がって来ません。多分、燃費に問題があるのだと予想していました。それはジョナサン・レイがガス欠をしたことによって、可能性が大になってました。ただ、7回ピットで行けるとなった時にはペースを上げて来るだろうと言うことも予想していました。

そして、第5スティントにその予想はあたり、ジョナサン・レイがペースアップ。中々ペースのあがらないハルクプロを抜き、トップに。ハルクプロはこのスティントで3番手まで落ちていました。そこで、チームは清成に第6スティントを走るように指示。これはピットインする10分前の事でした。そこで清成は急遽準備をし、選手交代。同じタイミングでピットアウトした秋吉選手とは17秒差でした。

ピットインがあるレースで、重要な要素としてピットイン後のアウトラップのタイムがあります。アウトラップはタイヤの暖まり具合やマシンのチェックなどで、ペースが落ちます。この日の秋吉選手のアウトラップは慎重で、清成とは約10~15秒の差があったことを清成は知っていました。レースも後半の第6スティント。清成はここが勝負だろうと、アウトラップから飛ばします。一気に秋吉選手とのタイム差を縮める作戦でした。しかし、これがあのクラッシュに繋がってしまいました。

急遽ピットアウトした清成を見送り、自分はメディアセンターに戻って、モニターを見ていました。そこに、場内アナウンサーが「デグナーで一台が転倒しています。あ〜、キヨナリだ〜!!」。モニターに映ったのは火だるまになっている#634号車。清成の姿は見えません。そしてすぐにリプレイが流れ、そこには清成がマシンと一緒にデグナー出口まで滑っている画像。その直後にマシンが火だるまになっている生映像。自分の中で「清成は火の中?」と焦りました。

すぐに、ピットに飛んで行き、情報収集。しかし、チームもオフィシャルも状況がわかりません。そこで、コントロールタワーに行き、清成の安否を確認。「清成選手は大丈夫です。少し火傷を追っていますが、意識ははっきりしています。今、コースサイドでドクターの治療を受けています。このままメディカルセンターに行くと思いますので、そこでお待ちください」と言われた時はホッとしました。自分はすぐに、ホスピタリティに行き、清成の着替えを持ってメディカルセンターへ。

しかし、メディカルセンターで待っていても、中々清成が戻って来ません。オフィシャルに無線で状況を聞いてもらったところ、清成がリタイアすると言う署名をしないと。鈴鹿8耐ではライダーがリタイア宣言をしないとリタイアになりません。あのマシンの大破状況では誰もリタイアするのだと思っていました。メディカルセンターにいたチーム関係者に状況を本田監督に伝えてくるようにお願いし、本田監督からリタイアするようにと指示が。それをドクターに伝えようとした時、そのドクターから「清成選手は今マシンを押して帰ってきます」と。正直「え?」でした。すぐにその事をチームに伝え、清成が戻ってくるダンロップ下のトンネル出口に向かいました。

やがて、メカやチーム関係者、報道陣などがトンネル出口に集まってました。30-40分は待ったでしょうか?トンネルの向こうに清成が見えました。そして、待っていた人たちが一斉に「清成!頑張れ〜」と声援。この時、自分は涙を堪えるのに必死だったことを覚えています。バイクは真っ黒、清成のヘルメットを脱がせると、顔も煤だらけ。つなぎも煤だらけでした。ルール上、一度はピットに戻らないと選手交代にならないので、清成はピットへ。そのまま立ち止まらずにメディカルセンターに。

メディカルセンターで検査をし、問題ないと言うことで、ホスピタリティに戻りました。清成に状況を聞くと「ちょっと無理をしてしまった。。。」と。そして転倒をしてからの経緯を聞くと、まず考えたのは「このままリタイアするのと、押して帰るのがどっちが怒られるか」だそうです。。。そして押して帰ると決めてから、ドクターともめたそうです。ドクターしては、火傷を追っているので、大事をとって、一度メディカルセンターへ行き、それで大丈夫なら、また戻って来てから押して帰れと。これは当然です。火傷の場合、火を吸い込んでいたら、喉の中や内蔵も火傷している可能性がある。その場合、時間が経つにつれ、気道が腫れ、呼吸が出来なくなります。しかし、清成は大丈夫の一点張りだったそうです。結局、ドクターは清成の説得に合意。押している最中に万一呼吸しずらくなったら、すぐにマシンを置いていくと言う約束で押して帰るのを許可したそうです。

チームは懸命にバイクを修復。残り1時間で修復を完了させ、高橋選手が完走を果たしました。あの状態のバイクを押して帰って来た清成も凄いですが、それを修理したチームも凄いです。

こうして清成の2012年の8耐はここで終わりました。

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